"検査済証がない建築物" と令和7年4月施行の建築基準法改正

 これまでは “建築確認手続きが不要” だったに木造戸建のリフォームは、今般の法改正(以下、法改正といいます。補足※1※2参照)により、”大規模なリフォーム” については、”建築確認が必要” になりました。この場合、過去の新築やその後の増改築等の検査済証の有無が問題になることがあります。
 なお“木造平屋(床面積200㎡以下)の大規模なリフォーム” および “木造戸建の大規模なリフォームに該当しないリフォーム” につきましては、これまでどおり ”建築確認は不要” とされています。


補足:※1 令和7年4月1日施行の脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律および ※2 建築基準法の改正(4号特例縮小:主に木造2階建以下の小規模建築物における建築確認審査の省略制度を縮小)
■本改正の目的はカーボンニュートラルに向けた建築物の断熱性と建築物の耐震性の向上とされています。
■建築確認が不要の場合でも建築基準法に適合しない建築は不可となります。
■免責事項:法令は将来変更される可能性があります。

検査済証がない建築物の状況
 次のグラフは国土交通省調べ(平成26年7月):平成10年の特定行政庁(建築主事)による検査率は確認件数の38%、同じく検査済証の交付件数は37%程度に留まると推認されます。
 私共の媒介事例においても建築年次が古い住宅ほど建築後の完了検査を受けていないために ”検査済証がない住宅” は非常に多い印象を受けています。

平成26年7月に国土交通省が策定した「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」より

住宅ローン利用の問題
検査済証がない建築物は融資機関の判断により、住宅ローンやリフォームローンを利用できない場合があります。ただし融資機関によっては検査済証が無くても融資審査の対象になり、私共の媒介事例においても審査の結果、融資が承認されたケースが多数ございます。
※住宅ローン等が利用できない場合、次に記載する ”現況調査” を行うことで融資審査の対象になる場合があります。

法改正と確認済証がない建築物
 “検査済証がない建築物(未検査・場合により図書の紛失等を含みます。)” は令和7年3月に国土交通省が策定した「既存建築物の現況調査ガイドライン」に基づく “現況調査” を行うことにより、既存建築物の増築、改築、大規模の模様替(以下、増築等といいます。)または用途変更の建築確認手続きに対応できる可能性があります。

・現況調査は建築主様の依頼に応じる一定の建築士または指定確認検査機関が行います。
・既存建築物は当時の法令に適合しても、その後の法改正により、現行の規定に不適格となった状態「以下、既存不適格といいます。」を継続できる ”緩和措置” が設けられています。
・既存不適格以外の不適合は現行の規定に適合させる改修が必要です。
【補足】国交省の通達より「既存建築物の増築等に係る建築基準法上の取扱いについて(技術的助言)」
 概要:
‟現況調査” を行っても、なお法適合状況が分からない場合には、構造安全性を損なうような著しい劣化が確認されなければ既存不適格として取り扱って差し支えないとされています。※令和7年3月26日 国住指第517号より一部抜粋

※既存建築物の建築状況等により、他の方法による対応も考えられます。詳細につきましては、市町村等の建築指導係またはリフォームを依頼する建築業者様(建築士を含みます。)に直接お問い合わせください。

”現況調査”の全体像・流れ
現況調査では、次の2つの調査を行います。
・検査済証の交付状況等の調査(調査1)
・現地調査(調査2)

※場合により、現行の規定に適合させる改修工事が必要になります。

既存不適格以外の不適合や適合状態不明の場合は現行規定に適合させる改修が必要